私が温泉で何度も見た「突然の転倒」高齢者が入浴・サウナで気をつけたいこと
私は温泉が好きで、週に3〜4回ほど近所の温泉施設へ通っています。
主人は私以上の温泉好きで、ほとんど毎日のように通っています。温かいお湯につかっていると体の力が抜け、気持ちまでゆっくりほぐれていくようで、私にとっても温泉は日々の疲れをリセットできる大切な時間です。
ただ、長く通っていると、楽しいことばかりではありません。
これまで何度か、浴室やサウナで高齢の方が突然倒れる場面を目にしました。
以前、露天風呂から上がった高齢の女性が室内のお風呂へ向かっていたとき、力が抜けたようにその場へスルスルと倒れたことがあります。
別の日にはサウナの中で女性が倒れ、周囲の人たちがスタッフを呼んでいました。つい最近も女湯で高齢の女性が倒れ、救急車が来たことがありました。
もちろん、私にはそれぞれの方が倒れた原因は分かりません。
ただ、こうした場面を何度も見てからは、「温泉は気持ちいいから大丈夫」と体調を過信しないことが大切なのだと感じるようになりました。
高齢者の入浴事故は珍しい問題ではありません。消費者庁が紹介している2024年の人口動態統計では、「浴槽内での及び浴槽への転落による溺死及び溺水」の死亡者7,776人のうち、65歳以上が7,363人と約95%を占めています。
自宅のお風呂と温泉施設では環境が異なりますが、熱いお湯に長く入らない、急に立ち上がらない、体調が悪い日は無理をしないといった基本は、温泉を楽しむときにも意識しておきたいポイントです。
温泉や入浴中に突然倒れる原因は一つではない
入浴中に人が倒れる原因を、見た目だけで判断することはできません。
血圧の変化、体温上昇、脱水のほか、心臓や脳の病気、服用している薬など、さまざまな可能性があります。
特に注意したいのが、浴槽から立ち上がるときです。
お湯につかっている間は体に水圧がかかっています。そこから急に立ち上がると水圧がなくなり、血圧の変化によって一時的に意識を失うことがあると消費者庁は注意を呼びかけています。
私が目にした女性も、露天風呂から出て歩き始めたあとに倒れました。
その方の原因が血圧だったのか、脱水だったのか、それとも別の理由だったのかは分かりません。
それでも、その光景を見て以来、私は湯船から出るときに以前よりゆっくり立つようになりました。
高齢者は「熱いお湯」と「長湯」に注意
「せっかく温泉に来たのだから、もう少し入っていたい」
気持ちのよいお湯につかっていると、そう思うことがあります。
しかし、熱いお湯に長くつかると体温が上がり、意識障害につながる可能性があります。
消費者庁では、高齢者の入浴事故を防ぐため、湯温は41℃以下、湯につかる時間は10分までを目安とすることや、浴槽から急に立ち上がらないことなどを紹介しています。
これは「10分なら必ず安全」という意味ではありません。
疲れている日、寝不足の日、体調がすぐれない日は、もっと短く切り上げる判断も必要です。
私は以前より、「あと5分」と頑張るより、少し物足りないくらいで上がるほうがいいと考えるようになりました。
サウナは「いつもの時間」にこだわらない
サウナでは、
「いつも10分だから」
「もう少し汗をかいてから」
と、自分で決めた時間まで我慢したくなることがあります。
けれど、その日の体調は毎回同じではありません。
食事が十分に取れていない、寝不足、すでに汗をたくさんかいている、いつもより疲れている。そんな日は普段と同じ入り方でも負担になる可能性があります。
めまい、吐き気、頭痛、動悸、強いだるさ、ぼんやりする感じなどがあれば、予定していた時間に関係なく早めに出て休むことが大切です。
「今日はサウナをやめておこう」という日があってもいいと思います。
夏の温泉では入浴前から水分不足のことも
入浴事故は冬に特に注意が必要ですが、夏には夏ならではの注意点があります。
暑い日に温泉施設まで歩いたり、車から施設まで移動したりするだけでも汗をかきます。その状態で温泉やサウナに入れば、さらに汗をかくことになります。
高齢になると、暑さや喉の渇きを感じにくくなる傾向があります。環境省も、高齢者は喉が渇いていなくても、こまめな水分補給をするよう呼びかけています。
「喉が渇いていないから大丈夫」とは限りません。
温泉へ行く日は、施設に着いてから慌てて大量に飲むのではなく、普段から少しずつ水分を取っておくことを意識したいところです。
ただし、心臓や腎臓の病気などで水分量について指示を受けている方は、一般的な目安ではなく主治医の指示を優先してください。
温泉に入る前に確認したいこと
私は最近、温泉に入る前に「今日はいつも通りかな」と一度考えるようにしています。
次のような日は、長湯やサウナを控える判断も必要です。
- □ いつもより疲れている
- □ 寝不足で体が重い
- □ 食事が十分に取れていない
- □ 暑い場所にいて、たくさん汗をかいた
- □ めまいやふらつきがある
- □ 飲酒後である
- □ 体調が悪いのに「せっかく来たから」と無理をしようとしている
また消費者庁は、食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴にも注意するよう呼びかけています。
薬について心配がある場合は、自己判断で服用を中止せず、医師や薬剤師に確認してください。
湯船から出るときは「立ってすぐ歩かない」
私自身が特に意識しているのが、湯船から出る瞬間です。
浴槽の縁や手すりにつかまりながら、ゆっくり立ちます。
そして立ったら、すぐに歩き出さない。
ふらつきがないことを確認してから動くようにしています。
温泉施設の床は濡れていて滑りやすいうえ、露天風呂には段差や石の床がある施設もあります。
ほんの少しのふらつきでも、転倒につながる可能性があります。
「急ぐ必要はない」と意識するだけでも、入り方はずいぶん変わります。
温泉や浴室で人が倒れたらどうする?
もし目の前で誰かが倒れた場合、原因を自分で判断しようとする必要はありません。
温泉施設なら、まずスタッフへ知らせます。
呼びかけに反応しない、正常な呼吸が確認できないなど緊急性が高い場合は、周囲の人と協力して119番通報につなげます。施設にAEDがある場合は、スタッフの指示や119番の通信指令員の案内に従って対応します。
浴槽内でぐったりしている人を発見した場合については、消費者庁も浴槽の栓を抜き、可能な範囲で救出や応急手当につなげるよう案内しています。
一人で無理に抱え上げようとして、自分まで転倒しないことも重要です。
よくある質問
温泉は何分くらい入ればいいですか?
消費者庁は高齢者の入浴事故防止策として、湯温41℃以下、湯につかる時間10分までを目安として紹介しています。
ただし、体調や湯温などによって負担は変わります。「10分入らなければならない」という意味ではなく、違和感があれば早めに上がりましょう。
少しふらつくだけなら休めば大丈夫ですか?
入浴後のふらつきには血圧の変化や脱水など複数の原因が考えられます。
まず安全な場所で休み、症状が強い、意識がおかしい、胸の痛みや息苦しさがある、症状が改善しないといった場合は、施設スタッフや医療機関、必要に応じて119番へ相談してください。
一人で温泉へ行っても大丈夫ですか?
一人で温泉を利用すること自体を一律に避ける必要はありません。
ただ、体調が悪い日は無理をせず、長湯やサウナを控えることが大切です。自宅での入浴については、同居者がいる場合、入浴前に一声かけておくことも消費者庁が勧めています。
好きな温泉だからこそ、無理をしない
私はこれからも温泉へ通うと思います。
何度も事故の場面を見たからといって、温泉そのものが怖くなったわけではありません。
むしろ以前より、
「今日は少し疲れているから短めにしよう」
「今日はサウナをやめておこう」
「立ち上がってから少し待とう」
と、その日の体調に合わせて入り方を変えるようになりました。
温泉は、長く入った人が得をする場所ではありません。
気持ちよく入って、無事に家へ帰るところまでが温泉時間だと思っています。
年齢を重ねても好きな温泉を楽しみ続けるために、「いつも大丈夫だったから」ではなく、今日の自分の体調を確認してから入る。
そんな小さな習慣を大切にしたいと思います。
※本記事は一般的な入浴時の安全情報をまとめたものです。持病や服薬状況によって注意点は異なります。体調や入浴について不安がある場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
参考資料
・消費者庁「年末年始、高齢者の事故に注意しましょう!―思いがけない事故のリスクは事前に減らすことができます―」
・消費者庁「みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故」
・消費者庁「高齢者の事故を防ぐために」
・環境省「高齢者のための熱中症対策」


