高齢者は1日にどれくらい水分をとればいい?1.2Lの目安と家族が確認したい脱水のサイン

夏になると、高齢の家族がどのくらい水分をとっているのか気になることがあります。

「ちゃんと水分とってる?」と聞いても、「飲んでるよ」と返ってくるだけで、実際にどのくらい飲んだのかまでは分からないこともあります。

高齢者の水分補給について調べると、よく出てくるのが「1日1.2L」という数字です。

ただ、この数字だけを覚えておけば安心というわけではありません。

食事からとれる水分もありますし、必要な量は体格、食事量、活動量、気温、発汗、持病などによって変わります。

大切なのは、一日の数字だけを見るのではなく、こまめに飲めているか、食事がとれているか、いつもと違う様子がないかを一緒に確認することです。

今回は、高齢者の水分補給の目安と、脱水を防ぐために本人や家族が日常生活で確認したいポイントをまとめます。

夏の自宅でこまめに水分をとる70代の女性

高齢者の水分補給は1日1.2Lが一つの目安

厚生労働省の熱中症予防に関する資料では、飲み物からとる水分について、1日あたり1.2L程度が一つの目安として紹介されています。

ただし、これは「高齢者なら全員、必ず水を1.2L飲まなければならない」という意味ではありません。

私たちは飲み物だけでなく、ご飯、味噌汁、野菜、果物などの食事からも水分をとっています。

また、必要な水分量は人によって異なります。

暑い日に外出したり、体を動かして汗をかいたりすれば水分を失いやすくなりますし、反対に健康状態によっては水分量について医師から指示を受けている場合もあります。

そのため、この数字は毎日達成しなければならないノルマではなく、水分補給を考えるための一般的な目安として捉えるのがよいでしょう。

特に心臓や腎臓などの病気で水分量を制限されている方は、自己判断で飲む量を増やさず、医師から受けている指示を優先してください。

1日1.2Lは水分補給の目安で食事や体調によって必要量が異なることを示す図

「のどが渇いたら飲む」だけでは足りないことも

高齢になると、若い頃に比べて暑さやのどの渇きを感じにくくなることがあります。

そのため、「のどが渇いたら飲もう」と考えていると、水分補給のタイミングが遅くなることがあります。

厚生労働省でも、高齢者の熱中症予防として、のどが渇いていなくてもこまめに水分をとることを呼びかけています。

難しく考えず、普段の生活の中に飲むタイミングを作っておくと続けやすくなります。

たとえば、

  • 朝起きた時

  • 食事の時

  • 午前や午後の休憩

  • 外出する前と帰宅した後

  • 入浴の前後

などです。

毎回きっちり量を測る必要はありません。

いつも座る場所に水や麦茶を置く、小さなペットボトルを目につく場所に置くなど、忘れにくい環境を作ることも一つの工夫です。

また、家の中にいても熱中症は起こります。

「外に出ていないから大丈夫」と考えず、エアコンなどを適切に使いながら室温にも注意しましょう。

水を何杯飲んだかだけでなく、食事量も見る

水分不足が心配になると、「今日は水を何杯飲んだ?」ということばかり気になりがちです。

でも、もう一つ確認したいのが食事量です。

普段は、ご飯や味噌汁、野菜、果物などからも水分をとっています。

暑さで食欲が落ちて食事量が減れば、食事からとれる水分も少なくなります。

そのため、

食事量がいつもより減っていないか

部屋が暑くなっていないか

普段より元気がない様子はないか

まで一緒に見ると、体調の変化に気づきやすくなります。

暑さで食欲が落ちて食事量が減ると、食事からとれる水分も少なくなります。

夏になると食欲そのものが落ちてしまう方は、👉「高齢者の夏の食欲不振、何を食べる?食べられない時に家族が確認したいこと」もあわせて参考にしてみてください。

高齢者の脱水は「いつもとの違い」に気づくことが大切

高齢者の水分不足が気になる時に飲み物・食事・室温・普段の様子を確認するポイント

脱水は、突然分かりやすい症状が出るとは限りません。

口の中が乾く、尿の回数や量が少なくなる、尿の色が濃くなる、だるい、めまいやふらつきを感じるなど、さまざまな変化がみられることがあります。

すべての症状を覚えようとするより、まずは「いつもと違わないか」を見ると変化に気づきやすくなります。

たとえば、

  • いつもより会話が少ない

  • 昼間なのに長時間横になっている

  • 食事も飲み物もほとんどとっていない

  • 立ち上がる時にふらついている

  • 電話で話した時の反応がいつもと違う

といった変化も、体調を確認するきっかけになります。

特に離れて暮らす親の場合、「水を飲んだ?」だけでは様子が分かりにくいことがあります。

そんな時は、

「今日は何を飲んだ?」

「お昼は何を食べた?」

「エアコンつけてる?」

「今日はトイレ、いつも通り?」

など、少し具体的に聞いてみると普段との違いをつかみやすくなります。

水だけでいい?塩分や経口補水液はどう考える?

夏になると、「水だけでなく塩分もとったほうがいい」と聞くことがあります。

ただし、日常生活を送っているすべての人が、塩分を追加したりスポーツドリンクを毎日飲んだりする必要があるわけではありません。

普段の食事からも塩分はとっています。

一方、暑い場所で長時間過ごしたり、大量に汗をかいたりした場合には、水分とともに失われた電解質を補うことが必要になる場合があります。

また、経口補水液は普段の水分補給用の飲み物ではありません。

脱水が起きている時などに、水分と電解質を補う目的で使われるものです。

スポーツドリンクも商品によって糖分の量が異なるため、「夏だから毎日飲んだほうがいい」と考える必要はありません。

高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病などで治療を受けている方は、水分や塩分、糖分について自己判断せず、医師や薬剤師の指示を確認してください。

自力で水を飲めない時は無理に飲ませない

暑い日に高齢者の様子がおかしいと、「まず水を飲ませなければ」と思うかもしれません。

しかし、本人が自分で飲める状態かどうかを確認することが大切です。

熱中症が疑われる場合は、まず涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめ、体を冷やします。

意識がはっきりしていて自分で飲める場合は、水分などを補給します。

一方で、

自力で水を飲めない

意識がない

呼びかけへの反応がおかしい

といった場合は、無理に口から飲ませてはいけません。

このような状態では、すぐに救急車を呼ぶなど速やかな対応が必要です。

「少し夏バテしただけだろう」と決めつけず、普段と明らかに違う状態がみられる場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

暑い日に高齢者の様子がおかしい時の冷却と救急要請までの対応手順

水分補給は「続けやすさ」で考える

毎日の水分補給は、一日だけ頑張るよりも、自然に続けられる方法を作るほうが大切です。

水や麦茶など、本人が普段から飲みやすいものを用意して、いつも過ごす場所から手が届くところに置いておくだけでも違います。

また、2Lのペットボトルは価格が割安でも、高齢者にとっては持ち上げたり、コップへ注いだりすることが負担になる場合があります。

そんな時は、500ml前後など扱いやすいサイズに変える方法もあります。

重い飲み物をスーパーから持ち帰ることが負担になっているなら、ネットスーパーや宅配を利用するのも一つの方法です。

大切なのは、「この飲み方が一番正しい」と決めることではありません。

本人が無理なく、毎日飲み続けられる方法になっているかを考えてみましょう。

FAQ|高齢者の水分補給でよくある疑問

高齢者は毎日必ず1.2L飲まなければいけませんか?

飲み物からとる水分として1日1.2L程度は一つの目安ですが、必要量は体格、食事、活動量、気温、健康状態などによって変わります。

食事からも水分をとっているため、数字だけで判断するのではなく、普段の食事や体調も合わせて考えることが大切です。

医師から水分量について指示を受けている場合は、その指示を優先してください。

水の代わりに麦茶でも大丈夫ですか?

普段の水分補給では、水だけにこだわる必要はありません。

麦茶など、本人が飲みやすく、日常的に続けやすい飲み物を利用する方法もあります。

ただし、糖分やカフェインを多く含む飲料だけに偏らないようにしましょう。

夜中のトイレが心配で水を飲みたがりません

夜間のトイレを心配して、夕方以降の水分を極端に減らしてしまう方もいます。

しかし、必要以上に水分を控えると脱水につながる可能性があります。

夜間頻尿が気になって生活に支障が出ている場合は、水分を自己判断で大きく減らすのではなく、かかりつけ医に相談することも考えてみましょう。

離れて暮らす親がきちんと水分をとっているか確認する方法は?

「水を飲んだ?」だけでなく、「今日は何を飲んだ?」「昼ご飯は食べた?」「エアコンは使っている?」など、具体的に聞くほうが様子をつかみやすくなります。

飲んだ量だけを見るのではなく、食事、室温、会話の様子などにも普段との違いがないか確認してみましょう。

まとめ|数字だけでなく「いつも通り過ごせているか」を見る

高齢者の水分補給では、飲み物からとる量として1日1.2L程度が一つの目安として紹介されています。

ただし、この数字を達成すれば必ず安心というわけではありません。

食事からも水分をとっていますし、必要量は体格や健康状態、暑さ、活動量などによって変わります。

だからこそ、

こまめに水分をとれているか

食事量が落ちていないか

室内が暑くなっていないか

普段と違う様子がないか

を一緒に見ることが大切です。

特に離れて暮らしている高齢の親の場合、「今日は何リットル飲んだか」を細かく管理するより、日々の会話の中で食事や室温、体調をさりげなく確認するほうが変化に気づきやすいこともあります。

そして、自力で水を飲めない、意識がない、呼びかけへの反応がおかしいなどの状態がみられる場合は、無理に水を飲ませず、すぐに救急車を呼ぶなど速やかに対応してください。

暑い時期は、水分補給だけでなく、食事や室温、普段の様子にも目を向けながら、無理なく夏を過ごせる環境を整えていきたいですね。

参考資料

・厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動
・厚生労働省「高齢者のための熱中症対策」
・環境省「熱中症予防情報サイト」
・環境省「熱中症環境保健マニュアル」

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