高齢になると賃貸を借りにくいのはなぜ?孤独死を心配する大家さんとシニアの部屋探し
「高齢になると、賃貸住宅を借りにくくなる」
そんな話を聞いて、これからも賃貸で暮らしたいのに大丈夫だろうかと不安になる方もいるのではないでしょうか。
私がこの問題を気にするようになったきっかけは、以前テレビで見た住宅の特集でした。
過去に室内で人が亡くなったことなどを理由に、周辺の相場より家賃が抑えられている物件が紹介されていたのです。
それを見て、「高齢の一人暮らしを大家さんが心配するのは、孤独死が起きるとその後の賃貸に影響するからなのだろうか」と疑問に思いました。
調べてみると、事情はそれほど単純ではありませんでした。
高齢だから賃貸住宅を借りられないという決まりはありません。ただ、国土交通省の資料でも、高齢者などの入居について、貸主側が孤独死や死亡後の残置物処理、家賃滞納などを不安に感じる場合があることが示されています。
そのため、特に高齢の一人暮らしでは、若い頃より部屋探しに時間がかかるケースも考えられます。
一方で、高齢者の住まい探しを支援する制度も整備されています。
まずは「高齢だから賃貸は無理」と諦めるのではなく、大家さんが何を心配しているのか、そしてどんな支援を利用できるのかを知っておくことが大切です。
高齢者は本当に賃貸を借りにくい?
高齢者だからという理由だけで、すべての賃貸住宅に入居できなくなるわけではありません。
ただし、高齢者、特に一人暮らしの場合、貸主が入居後のリスクを心配することがあります。
国土交通省が住宅セーフティネット制度について説明する資料では、貸主側の不安として、孤独死、死亡時の残置物処理、家賃滞納などが挙げられています。
たとえば一人暮らしの入居者が室内で亡くなり、発見まで時間がかかった場合には、状況によって特殊清掃や原状回復が必要になることがあります。
さらに、家具や家電などが部屋に残っていれば、その処理も問題になります。
国土交通省と法務省は、単身高齢者などが亡くなった後の賃貸借契約の解除や残置物の処理を円滑にするため、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」も公表しています。
つまり、高齢者であることだけが問題なのではなく、
「万一のとき、誰に連絡すればよいのか」
「残された家財はどうするのか」
「入居中の見守りはどうするのか」
といった点も、貸主側の判断に関係することがあります。
孤独死があった部屋はすべて事故物件になる?
ここは誤解しやすいところです。
私も以前は、「部屋の中で人が亡くなったら、その後は事故物件になって家賃が安くなるのでは」と単純に考えていました。
しかし、人が亡くなった住宅だからといって、必ず事故物件として扱われたり、必ず家賃が安くなったりするわけではありません。
国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しています。
このガイドラインでは、賃貸住宅で発生した老衰や病気による自然死、日常生活の中で起きた不慮の事故死について、特殊清掃などが行われていない場合は、原則として借主に告知しなくてもよいとされています。
つまり、
「高齢者が自宅で亡くなった=必ず事故物件になる」
というわけではありません。
一方で、亡くなってから発見まで時間がかかり、特殊清掃などが行われた場合や、自然死・日常生活上の不慮の死以外の場合には扱いが異なることがあります。
賃貸住宅では一定の告知期間の目安も示されていますが、事件性や社会的な影響など個別事情によって対応が異なる場合があります。
また、借りる人から過去の死亡について尋ねられた場合など、単純に期間だけでは判断できないケースもあります。
そのため、
「孤独死があった部屋=必ず事故物件」
「事故物件=必ず家賃が安い」
と一律に考えないことが大切です。
自然死でも大家さんが孤独死を心配するのはなぜ?
では、自然死であれば原則として告知が不要なケースもあるのに、なぜ貸主は孤独死を心配するのでしょうか。
ポイントの一つは、亡くなったことそのものと、発見までに時間がかかることは別の問題だからです。
たとえば家族や周囲の人が早く気づくことができれば、その後の対応を進めやすくなります。
一方、一人暮らしで長期間発見されなかった場合には、特殊清掃や原状回復が必要になる可能性があります。残された家財の処理や契約終了の手続きが問題になることもあります。
そのため、貸主にとっては「高齢だから」という年齢だけではなく、緊急時の連絡先や見守り、亡くなった後の対応が確認できるかどうかも重要になります。
高齢者の賃貸問題を考えるときは、「孤独死をすると事故物件になるから」という一つの理由だけで説明しないほうが実態に近いでしょう。
高齢者が賃貸を探すときに確認しておきたいこと
これから賃貸住宅を探す方は、家賃や間取りだけでなく、入居後の安心についても確認しておくとよいでしょう。
まず考えておきたいのが、緊急連絡先です。
離れて暮らす家族や親族など、何かあったときに連絡できる人がいる場合は、不動産会社に伝えられるようにしておきます。
一人暮らしなら、見守りサービスの利用も選択肢になります。
また、最初から高齢者の入居について相談しやすい不動産会社や、高齢者などの入居を受け入れる住宅を探す方法もあります。
何軒か断られたからといって、「もう賃貸は借りられない」と考える必要はありません。
一般的な不動産会社でなかなか見つからない場合には、次に紹介する公的な住宅支援につなげる方法があります。
高齢者の部屋探しで利用できる住宅支援
高齢者の住まい探しについては、国も支援制度を設けています。
高齢者や低額所得者、障害者、子育て世帯など、住宅の確保に特に配慮が必要な人は、住宅セーフティネット制度で「住宅確保要配慮者」と位置づけられています。
2025年10月1日には改正住宅セーフティネット法が施行され、住まいと福祉が連携した支援も強化されました。
その一つが「居住サポート住宅」です。
居住サポート住宅では、住宅の提供だけではなく、安否確認や見守り、必要に応じた福祉サービスへのつなぎなどの支援が行われます。
また、地域には「居住支援法人」があります。
居住支援法人は、高齢者など住宅の確保に困っている人に対して、住まい探しの相談や賃貸住宅への入居支援、入居後の生活支援などを行っています。
さらに、高齢者などの入居を拒まない「セーフティネット住宅」を探す方法もあります。
「高齢なので不動産会社で断られてしまった」
「一人暮らしなので入居できる物件が見つからない」
そんな場合には、自分だけで何軒も不動産会社を回り続けるのではなく、自治体の住宅相談窓口や地域の居住支援法人に相談してみるのも一つの方法です。
住んでいる地域によって利用できる支援や相談先が異なるため、自治体のホームページなどで確認してみてください。
高齢になってからの賃貸は早めに準備しておく
「高齢になったら賃貸住宅を借りられない」と必要以上に不安になる必要はありません。
一方で、高齢の一人暮らしでは、孤独死や残置物、緊急時の対応などを貸主が心配する場合があり、部屋探しがスムーズに進まないこともあります。
今は元気でも、賃貸住宅に長く住み続けるなら、緊急連絡先や見守りについて一度確認しておくと安心です。
そして部屋探しで困ったときには、一般の不動産会社だけでなく、セーフティネット住宅、居住サポート住宅、居住支援法人などの仕組みがあることも覚えておきたいところです。
高齢者の賃貸問題は、借りる側だけの問題でも、大家さんだけの問題でもありません。
借りる人が安心して暮らせて、貸す人も安心して部屋を提供できる仕組みを上手に利用することが、これからますます大切になりそうです。
あわせて読みたい
今回調べる中で参考にしたもの
・国土交通省「住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~」
・国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」
・国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
・国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
※制度や物件ごとの対応は、地域や契約内容、個別の事情によって異なる場合があります。実際に住まいを探す際は、不動産会社、自治体の住宅相談窓口、居住支援法人などにもご確認ください。



