水の飲みすぎで「水中毒」に?高齢者の熱中症対策と安全な水分補給
暑い日に親へ電話すると、「ちゃんと水を飲んでいる?」とつい確認したくなります。
高齢になると喉の渇きを感じにくくなることがあり、熱中症を防ぐには早めの水分補給が欠かせません。
ただ、「熱中症が怖いから」と短時間に何杯も水を飲めば安心、というわけでもありません。
大量の水を短時間に取るなどして体内の水分とナトリウムのバランスが崩れると、血液中のナトリウム濃度が低くなることがあります。
こうした状態が一般に「水中毒」と呼ばれることがありますが、低ナトリウム血症は水の飲みすぎだけが原因ではありません。 病気や薬が関係する場合もあります。
普段から水を少しずつ飲んでいるだけで、すぐに水中毒になるという話ではありません。
夏の水分補給は、飲まないことでも、一気に大量に飲むことでもなく、暑さや体調に合わせてこまめに補うことが基本です。
「水中毒」と低ナトリウム血症は同じもの?
低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が低くなった状態です。
短時間に大量の水を取ることで血液が薄まり、低ナトリウム血症につながるケースがあります。このような状態が「水中毒」と表現されることがあります。
一方で、低ナトリウム血症は水の飲みすぎだけが原因ではありません。
利尿薬などの薬、心不全や腎臓の病気、ホルモンの異常などが関係することもあります。
そのため、頭痛や吐き気が出たからといって、「水を飲みすぎたせいだ」と自分だけで判断するのは避けたいところです。
高齢者は水分不足にも飲みすぎにも注意する
高齢者は暑さや水分不足を感じにくく、熱中症になりやすいことが知られています。
厚生労働省も、室内でも屋外でも、喉が渇いていなくてもこまめに水分を補給するよう案内しています。
一方、持病や服用している薬によっては、水分やナトリウムの調整に注意が必要なことがあります。
特に、
心臓や腎臓の病気で水分量を指示されている
利尿薬などを服用している
以前に低ナトリウム血症を指摘されたことがある
といった場合は、一般的な水分量をそのまま当てはめないほうがよいでしょう。
水分や塩分を制限するよう医師から指示を受けている方は、その量を基準にします。
高齢者は1日1.2L飲めばいい?
高齢者向けの熱中症対策では、飲み物から取る水分として1日1.2L程度が一つの目安として紹介されています。
厚生労働省の高齢者向け資料でも、1日1.2Lを目安に、喉が渇いていなくてもこまめに水分を取る方法が示されています。
ただし、これは全員が必ず同じ量を飲めばよいという意味ではありません。
必要な量は、体格、食事内容、暑さ、活動量、発汗量、持病、薬などによって変わります。
「今日はまだ1.2L飲んでいないから」と、寝る前に不足分をまとめて飲むための数字ではありません。
起床時や外出の前後、入浴の前後など、生活の中でタイミングを分けて補うほうが続けやすいでしょう。
大量に汗をかいたときは水だけでいい?
普段は、食事に加えて水やお茶などから水分を補います。
ただ、暑い場所で長時間過ごしたり、運動や庭仕事などで大量の汗をかいたりすると、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。
日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」でも、熱中症では水分とともに電解質の補給が重要とされています。
だからといって、普段から塩あめや塩分タブレットを大量に取る必要はありません。
高血圧、心臓病、腎臓病などで塩分制限を受けている方もいます。
経口補水液も日常のお茶代わりとして大量に飲むものではなく、脱水や熱中症が疑われる場面で使われるものです。
塩分や水分の取り方に迷う場合は、自己判断で増やさず、持病や薬を把握している医師や薬剤師に確認します。
頭痛や吐き気があっても「水中毒」と決めつけない
低ナトリウム血症では、頭痛、吐き気、強いだるさ、意識の変化、けいれんなどがみられることがあります。
ただ、こうした症状は熱中症でも起こることがあります。
暑い日に体調を崩したあと、
「水を飲んだから水中毒だ」
「汗をかいたから熱中症だ」
と症状だけで見分けることはできません。
呼びかけへの反応がおかしい、意識がない、けいれんがある、自力で水分を飲めないといった場合は、無理に飲ませず、救急車を呼びましょう。
厚生労働省も、自力で水が飲めない場合や意識がない場合は、すぐに救急車を呼ぶよう案内しています。
夏の水分補給は「一気飲み」より普段の習慣にする
熱中症を心配して、水分補給そのものを怖がる必要はありません。
特に高齢者では、水分不足を避けることが重要です。
夏の水分補給では、次のように考えておくと分かりやすいでしょう。
喉が渇く前から少しずつ飲む
水分だけでなく、暑い日はエアコンなどで室温も調整する
大量に汗をかいたときは、水分と電解質の両方を意識する
水分・塩分制限を受けている場合は、医師から示された量を基準にする
熱中症対策は、「水を何リットル飲んだか」だけで決まるものではありません。
休憩や冷房も含めて、体に熱をためないことが基本です。
よくある質問
水をたくさん飲むと水中毒になりますか?
普通に生活しながら水を少しずつ飲んでいるだけで、すぐに水中毒になるわけではありません。
短時間に大量の水を取るなどして、体内の水分とナトリウムのバランスが大きく崩れた場合に低ナトリウム血症につながることがあります。
高齢者は1日1.2Lを必ず飲むべきですか?
1.2Lは熱中症予防で示されている一般的な目安の一つです。
全員に同じ量が必要という意味ではありません。
水分制限を受けている方は、一般的な目安ではなく、医師から示された量を基準にしてください。
熱中症予防には塩分も毎日追加したほうがいいですか?
大量に汗をかいた場合には、水分とともに塩分などの電解質補給が必要になることがあります。
ただし、普段の食事に加えて毎日塩分を増やす必要があるとは限りません。
高血圧や心臓・腎臓の病気で塩分制限を受けている方は、自己判断で増やさないようにしてください。
水分不足が心配なら脱水のサインも確認する
夏の水分補給では、「飲みすぎ」だけを心配するのも、「脱水だけ避ければいい」と考えるのも偏ってしまいます。
普段の食事、暑さ、汗の量、体調、持病などを合わせて見ることが必要です。
「高齢の親がそもそも十分に水分を取れているのか心配」という方は、👉「高齢者は1日にどれくらい水を飲めばいい?脱水症状のサイン」もあわせて確認してみてください。
こちらでは、日常の水分不足を防ぐ考え方と、脱水を疑うときに気づきたい変化を詳しくまとめています。
今回調べる中で参考にしたもの
厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」
厚生労働省「高齢者のための熱中症対策」
環境省「熱中症予防情報サイト」
日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」

