高齢者のウォーキングはどう始める?無理なく続ける歩き方と安全対策

親に「少し歩いたほうがいいよ」と声をかけても、「膝が痛くなったら困るし、暑い日は外に出たくない」と返ってくることがあります。

健康のために体を動かしたほうがよいと分かっていても、長く歩くことだけが運動ではありません。

高齢者のウォーキングで最初に考えたいのは、歩数を増やすことよりも、今の体力で無理なく続けられる動き方を見つけることです。

住宅街を無理のないペースで歩く高齢夫婦

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、高齢者は健康状態や体力に合わせながら、今より少しでも身体活動を増やすことが勧められています。

ここでは「1日何歩」という数字より、ウォーキングを始めるときの考え方、日常生活で体を動かす方法、暑い日の対策、安全に続けるポイントを中心に整理します。

高齢者のウォーキングは今の活動量から始める

普段ほとんど歩いていない方が、初日から長い距離を歩く必要はありません。

まずは、自分が普段どのくらい動いているかを振り返ってみます。

近所の店まで歩く。

家の周りを少し歩く。

用事のついでに少し遠回りする。

この程度からでも始められます。

厚生労働省も、身体活動量が少ない方や高齢者では、現在の体力や健康状態に合わせ、無理のない強さや時間から始めて少しずつ増やしていくことを重視しています。

歩いた翌日に強い疲れや関節の痛みが残るなら、距離や時間が今の体には多すぎた可能性があります。

「目標まであと何歩足りない」と考えるより、前より少し動く時間が増えたかを見るほうが続けやすくなります。

散歩だけでなく、家事や買い物も身体活動になる

家事や買い物で日常的に体を動かす高齢女性

ウォーキングというと、運動靴を履いて30分ほど外を歩く姿を思い浮かべるかもしれません。

でも、身体活動は散歩だけではありません。

近所のスーパーへ歩いて買い物に行くことも、掃除や洗濯で家の中を動くことも、日常生活の中の身体活動です。

庭や玄関まわりを手入れしたり、家の中でこまめに立ったり歩いたりする動きも積み重なります。

特に外出する予定がない日は、「散歩に行けなかったから今日は運動ゼロ」と考えなくてもよいでしょう。

長く座っていることに気づいたら、一度立って飲み物を取りに行く。別の部屋まで歩く。

そうした小さな動きでも、座りっぱなしの時間を減らせます。

ウォーキングだけでなく筋力とバランスも意識する

歩くことは取り入れやすい運動ですが、ウォーキングだけですべての体力を維持できるわけではありません。

厚生労働省では、高齢者に筋力トレーニングを週2〜3日、さらに筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた運動を週3日以上行うことを勧めています。

筋力トレーニングと聞くと、重い器具を使う運動を想像しがちです。

しかし、安定した椅子からゆっくり立ち上がる、支えにつかまりながらかかとを上げ下げするといった動きも、足の筋力を使います。

大切なのは、難しい運動を増やすことではなく、転倒しない環境で続けることです。

ふらつきがある方が一人で片足立ちをしたり、深いスクワットを繰り返したりするのは避けます。

持病がある方や、膝・腰の痛み、ふらつきなど体力面に不安がある方は、医師や理学療法士などに相談すると、自分に合った運動方法を考えやすくなります。

暑い日や雨の日は室内で体を動かす

「毎日歩く」と決めたからといって、猛暑の日まで外へ出る必要はありません。

高齢者は暑さを感じにくいことがあり、真夏の屋外ウォーキングでは熱中症にも注意が必要です。

暑さが厳しい日は、自宅の廊下を歩く、室内で足踏みをする、買い物のついでに冷房の効いた施設内を歩くなど、場所を変えて体を動かします。

屋外を歩く場合は、その日の気温や熱中症警戒情報を見て、暑さが厳しい時間帯を避けます。

雨の日も同じです。

濡れた道や滑りやすい場所を歩いて転倒するくらいなら、その日は室内で動く日に変えたほうが安全です。

歩数を達成することより、体調を崩さず続けられることを優先します。

ウォーキング前に靴と歩く道を確認する

歩く距離だけでなく、足元も見ておきたいところです。

靴底がすり減っていないか。

履いたときに足がぐらついたり、かかとが大きく浮いたりしないか。

歩いたあとに足の一部だけが痛くならないか。

普段から履き慣れていて、滑りにくい靴を選びます。

歩く道も、段差が多い場所や交通量の多い道路、暗くて足元が見えにくい時間帯はできるだけ避けます。

以前は問題なく歩けたコースでも、その日の体調によって長く感じることがあります。

「いつもの道だから最後まで歩く」と決めず、疲れたら途中で短くして帰る選択肢も持っておくと安心です。

歩いている途中に痛みや異変が出たら中止する

ウォーキング中の体調異変で立ち止まる高齢男性

ウォーキング中に少し息が弾むことはあります。

一方で、胸の痛み、強い息切れ、めまい、吐き気、いつもと違う強い動悸、膝や腰の強い痛みなどが出た場合は、その場で運動を中止します。

症状が強い場合や休んでも治まらない場合は、医療機関への相談を検討してください。

また、持病がある方や、これまでほとんど運動してこなかった方で体調面に不安がある場合は、運動量を急に増やす前に主治医へ相談したほうがよいこともあります。

ウォーキングは健康のために行うものです。

痛みや体調不良を我慢して目標を達成することが目的ではありません。

毎日同じ距離を歩かなくても続けられる

ウォーキングを始めると、「毎日やらなければ」と考えてしまうことがあります。

でも、近所を歩く日があっても、買い物や家事でよく動く日があっても構いません。雨の日なら室内で体を動かすなど、その日の状況に合わせて変えていきます。

体調がすぐれない日は休む。

元気な日は少し長く歩く。

そんな調整ができたほうが、長く続けやすくなります。

歩数計の数字だけで一日を評価する必要もありません。

座っている時間が少し短くなった。

近所まで歩いて用事を済ませられた。

家の中で前よりこまめに動けた。

そうした変化も身体活動の一部です。

ウォーキングを特別な「運動の時間」にしすぎず、普段の暮らしの中へ少しずつ入れていくと習慣にしやすくなります。

よくある質問

高齢者は毎日ウォーキングしたほうがいいですか?

必ず毎日同じ距離を歩く必要はありません。

体調や天候に合わせて散歩、買い物、家事、室内での運動などを組み合わせます。

外を歩けない日でも、長く座り続けないようにして生活の中で少し体を動かせれば、身体活動を増やすことにつながります。

ウォーキングは何分くらいから始めればいいですか?

普段ほとんど歩いていない方は、最初から長時間を目標にしないほうがよいでしょう。

近所を短く歩くところから始め、歩いている最中の体調だけでなく、翌日に強い疲労や痛みが残らないかも見ながら少しずつ増やします。

「○分歩かなければ意味がない」と数字だけで決める必要はありません。

膝や腰が痛いときも歩いたほうがいいですか?

痛みを我慢して歩数や距離を増やすのは避けます。

痛みの原因や程度によって適した運動は異なります。歩くと痛みが強くなる、痛みが長く続く、ふらつきがあるといった場合は、医師や理学療法士などに相談してください。

ウォーキングを続けていると、「自分の年齢なら、1日にどれくらい歩けばいいのだろう」と歩数そのものが気になることもあります。

👉「高齢者は1日どれくらい歩けばいい?60代・70代・80代の運動量の目安」では、65歳以上の公的な目安や、60代・70代・80代で歩数をどう考えるかを詳しく整理しています。

参考資料

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

厚生労働省「身体活動・運動の推進」

環境省「熱中症予防情報サイト」

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