高齢の親が転倒した後に家族が確認したいこと|父の事故から見直した暮らしと安全対策
父が自宅の浴室で転倒し、肋骨を痛めたことがあります。
その日は妹と子どもたちが父の家に来ていたため、転んだことにもすぐ気づくことができました。
知らせを聞いたとき、最初に頭に浮かんだのは、
「もし一人だったら、どうなっていただろう」
ということでした。
高齢になると転倒しやすくなることは知っていたつもりでした。でも、実際に家族が転んで初めて、「滑り止めを置けばいい」という話だけではないと感じました。
高齢の親が一度転倒したあとに、家族がまず確認したいのは次の5つです。
けがや体調に変化がないか
どこで、どんな動作をしていたときに転んだのか
転んだ場所以外にも危険な生活動線がないか
足腰、視力、服用している薬などに以前との変化がないか
転倒をきっかけに「動くのが怖い」と感じていないか
大切なのは、家の中を一度に全部変えることではありません。
まず「なぜ転んだのか」を本人と一緒に振り返り、同じような場面がほかにないかを確認するところから始めます。
転倒した直後は、まずけがや体調を確認する
親が転んだと聞くと、「立てたなら大丈夫かな」と考えてしまうことがあるかもしれません。
しかし、高齢者の転倒では、骨折や頭部のけがにつながる場合があります。
消費者庁も、高齢者の転倒・転落事故が大きなけがにつながり、その後の生活に影響することがあるとして注意を呼びかけています。
強い痛みがある、頭を打った可能性がある、意識や受け答えが普段と違う、手足を動かしにくいなどの異変がある場合は、無理に動かさず、状態に応じて救急要請や医療機関への相談を検討します。
父の場合も、転んだという事実だけではなく、肋骨を痛めていたことが分かりました。
事故の原因を探す前に、まず本人の状態を確認する。
家族として最初に覚えておきたいことだと思います。
「どこで転んだか」だけでなく「何をしていたか」を確認する
父は浴室から出ようとしたときに転びました。
最初は私も、「床が滑りやすかったのかな」と考えました。
でも、転倒のきっかけは場所だけでは分かりません。
立ち上がった直後だったのか。
浴槽をまたいでいたのか。
急いでいたのか。
その前からふらついていたのか。
何かにつかまろうとしていたのか。
同じ浴室でも、転んだときの動作によって見直すポイントは変わります。
本人を責めるように、
「どうして転んだの?」
と聞くよりも、
「そのとき、何をしようとしていたの?」
と順番を一緒に思い出すほうが、状況を整理しやすいと感じています。
転んだ場所だけでなく、普段の生活動線を見る
父の事故は浴室で起こりました。
それ以来、私は実家へ行くと浴室だけを見るのではなく、父が普段どこを歩いているのかも気にするようになりました。
寝室からトイレまで。
居間から玄関まで。
階段を上り下りするとき。
よく通る場所に荷物が出ていないか、暗い場所はないか、立ち上がるときに何かにつかまっていないかを見ます。
消費者庁も、高齢者の転倒対策では、段差や床に置かれた物などの生活環境だけでなく、本人の身体状態にも目を向けるよう案内しています。
事故が起きた一点だけを直して終わるのではなく、その人が毎日どこを歩き、どこで立ったり座ったりしているかを見ることが、次の事故を防ぐヒントになります。
家の問題だけでなく、本人の身体の変化も確認する
家の中を見ても、転倒につながりそうな大きな問題が見つからないこともあります。
そんなときは、本人の変化にも目を向けます。
以前より足が上がりにくくなっていないか。
立ち上がったときにふらついていないか。
眼鏡が合わず、足元が見えにくくなっていないか。
服用している薬のあとに、眠気やふらつきを感じていないか。
消費者庁も、加齢による身体機能の変化のほか、病気や薬の影響などが転倒に関係する場合があると案内しています。
気になる変化があれば、家族の判断で薬を減らしたり中止したりせず、かかりつけ医や薬剤師に伝えて確認します。
家を安全にすることと、本人の状態を見ること。
どちらか一方だけではなく、両方を見るようになったことは、父の事故後に私が大きく変わった点です。
転倒後に「動くのが怖い」と感じていないか確認する
一度大きく転ぶと、本人が以前より慎重になるのは自然なことだと思います。
ただ、
「また転んだら怖いから」
と歩く機会を減らしたり、外出をやめたりすると、それまでより活動量が落ちてしまうことがあります。
転倒を防ぐために行動をすべて制限するのではなく、必要な安全対策をしながら、できる生活は続けていくという考え方も必要です。
介護施設での転倒を扱った日本老年医学会のステートメントでも、転倒を完全に防ぐことは難しく、生活機能の維持・改善とのバランスを考える必要性が示されています。
転倒後に歩き方が大きく変わった、外へ出なくなった、立ち上がることを怖がるようになったなどの変化があれば、かかりつけ医や理学療法士などに相談する方法もあります。
「転ばないこと」だけを目標にするのではなく、その人がこれまでの生活をどこまで続けられるかも一緒に考えたいところです。
家族だけで一気に家を変えない
父が転んだと聞いた直後は、私も、
「手すりを付けたほうがいい」
「ここも片づけたほうがいい」
と、いろいろ考えました。
でも、本人にとっては毎日暮らしている自分の家です。
家族が心配だからと家具の位置を突然変えたり、本人が使っている物を勝手に片づけたりすると、いつもの感覚が変わり、かえって動きにくくなる場合もあります。
まず、
「ここ、歩きにくくない?」
「立つときにつかまる場所があったほうがいい?」
と聞いてみる。
本人が実際に困っているところから確認するほうが、話も進めやすくなります。
必要に応じて手すりや住宅改修、福祉用具を検討する方法もあります。
すでに介護保険サービスを利用している場合は担当のケアマネジャー、まだ利用していない場合は地域包括支援センターなどに相談することもできます。
一度で完璧な家にしようとせず、本人の暮らし方を聞きながら少しずつ見直すほうが現実的です。
転倒した原因が分からないときは、いくつかの要因を一緒に振り返る
転倒したからといって、必ず一つの原因が見つかるとは限りません。
床の状態だけでは説明できないこともあります。
そんなときは、転倒した直前の動作、体調、履物、照明、服用している薬などを一つずつ振り返ります。
例えば、
「その日は体調が悪くなかったか」
「急いでいなかったか」
「いつもと違う履物ではなかったか」
「最近ふらつくことが増えていないか」
などです。
転倒が繰り返される場合や、ふらつき、歩きにくさなど身体の変化が気になる場合は、かかりつけ医などへ相談しておくと原因を考える手がかりになります。
原因を一つに決めつけるより、生活環境と本人の状態を一緒に見ることが大切です。
よくある質問
一度転倒したら、家全体を見直したほうがいいですか?
すべてを一度に変える必要はありません。
まず転んだときの状況を確認し、本人が普段よく歩く場所や、立ったり座ったりする場所から見ていくと優先順位を付けやすくなります。
本人が「大丈夫」と言う場合はどうすればいいですか?
本人の気持ちを尊重しながら、以前との小さな変化を確認してみます。
「危ないから変えよう」と決めるより、
「最近ここ、歩きにくくない?」
「立つときに困ることはない?」
と具体的に聞くほうが話しやすいこともあります。
転倒しないように外出を減らしたほうがいいですか?
転倒が心配だからといって、すべての活動を控える必要があるとは限りません。
転倒した原因や本人の体調によって対応は変わります。
歩くことや外出を極端に減らすようになった場合は、医師やリハビリテーションの専門職などへ相談してみる方法があります。
転倒した原因が分からない場合はどうすればいいですか?
転んだ場所だけでなく、その直前の動作や体調、履物、照明、服用している薬などを一緒に振り返ります。
原因が一つに絞れないこともあります。
転倒が繰り返される場合や、ふらつきなど身体の変化が気になる場合は、かかりつけ医などへ相談してみましょう。
父の転倒後、私が一番気にするようになったこと
父が転んでから、私が一番変わったのは「危ない場所を探すこと」だけではありません。
以前と同じように歩けているか。
立ち上がるときに何かにつかまっていないか。
掃除や入浴など、以前は普通にしていたことが負担になっていないか。
そんな小さな変化を見るようになりました。
父には、できることはこれからも自分で続けてほしいと思っています。
そのうえで、少し危なくなったところや負担になったところだけ、家族が補う。
何でも先回りしてやってしまうのではなく、本人が今もできていることは残していきたいです。
転倒を完全に防ぐことは難しいかもしれません。
それでも、一度の事故を「たまたま転んだ」で終わらせず、本人の暮らしが以前とどう変わったのかを家族が一緒に見ていくことはできます。
今はそんな距離で、父の暮らしを見守っていけたらと思っています。
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今回の記事では、高齢の親が実際に転倒したあと、家族が何を確認するかを中心にまとめました。
浴室だけでなく、玄関、階段、寝室、廊下など、家の中で転びやすい場所そのものを確認したい場合は、こちらの記事で場所ごとの対策を紹介しています。
👉シニアが家の中で転びやすい場所7選|今日から始める転倒予防と安全対策
今回調べる中で参考にしたもの
消費者庁「高齢者の転倒事故に注意しましょう」
消費者庁「みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故」
日本老年医学会「介護施設内での転倒に関するステートメント」
※転倒後の対応は、けがの程度や持病、服用している薬などによって異なります。強い痛みがある、頭を打った可能性がある、意識や受け答えが普段と違う、手足を動かしにくいなどの異変がある場合は、無理に動かさず、状態に応じて救急要請や医療機関への相談を検討してください。



