父が浴室で転倒しました。高齢者のお風呂事故をきっかけに見直した家庭でできる対策
高齢者の転倒事故は、外出先だけでなく、自宅の浴室でも起こることがあります。
私は両親と離れて暮らしているため、普段の様子を毎日直接見ることはできません。
電話で話したり、妹から実家の様子を聞いたりしながら、「今日も元気にしているかな」と気にかけています。
少し前、その父が浴室から出ようとした時に転倒し、肋骨を痛めてしまいました。
幸い、その日は妹が子どもたちを連れて実家に来ていました。
父が転んだ時も一人ではなく、すぐにそばへ行くことができたそうです。
その話を聞いた時は、本当に驚きました。
もし父が一人で入浴していたら。
もし転んだあと、すぐに立ち上がれなかったら。
そう考えると、今でも少し怖くなります。
私はこれまで、温泉で高齢の方が足を滑らせたり、立ち上がる時によろけたりする場面を何度か見かけたことがあります。
それでも、自宅のお風呂は毎日使う身近な場所なので、どこかで「家の中なら大丈夫」と思っていたのかもしれません。
今回の父の転倒をきっかけに、高齢者が浴室で転びやすい理由や、家庭でできる転倒予防について改めて調べてみることにしました。
高齢者の転倒事故は浴室でも起こります
消費者庁や東京消防庁では、高齢者の家庭内事故について注意を呼びかけています。
家の中には、階段、玄関、寝室、トイレなど、転倒につながる場所がいくつもあります。
その中でも、浴室や脱衣所は水分や段差があり、特に気をつけたい場所の一つです。
父も、特別に危険なことをしていたわけではありません。
お風呂から出ようとした、ごく普通のタイミングでした。
だからこそ、浴室での転倒は特別な人だけに起こる事故ではなく、誰にでも起こる可能性があるのだと感じました。
なぜ浴室では転びやすいのでしょうか
床が水や石けんで滑りやすくなる
浴室の床は、水や石けん、シャンプーなどによって滑りやすくなることがあります。
見た目にはそれほど濡れていなくても、足を置いた瞬間に滑ることもあります。
床に石けんが残っていたり、洗面器やシャンプーボトルが通り道に置かれていたりすると、さらに転倒の危険が高まる可能性があります。
浴槽をまたぐ時にバランスを崩しやすい
浴槽をまたぐ時には、一時的に片足で体を支えることになります。
若い頃は意識せずにできていた動作でも、年齢とともに足腰の筋力やバランス感覚が変化すると、ふらつきやすくなる場合があります。
湯船から立ち上がる時や、浴室から出る時も、体勢が不安定になりやすい場面です。
小さな段差に気づきにくくなる
浴室と脱衣所の間には、小さな段差がある家庭も少なくありません。
視力が低下している場合や照明が暗い場合は、わずかな段差や床に置かれた物に気づきにくくなることがあります。
少しの段差でも、足が上がりにくくなっていると、つまずく原因になる可能性があります。
温度差や体調の変化にも注意が必要
浴室では転倒だけでなく、入浴前後の急な温度変化や、長時間の入浴による体調の変化にも注意が必要です。
冬は暖かい浴室と寒い脱衣所の温度差が大きくなりやすく、夏は汗をかくことで脱水気味になる場合があります。
入浴後に急に立ち上がると、立ちくらみやふらつきを感じることもあります。
体調がいつもと違う日や、めまい、立ちくらみを感じる時は、無理に入浴しないことも大切です。
大掛かりな工事をしなくてもできる浴室の転倒予防
父の事故が起こるまでは、私は心のどこかで「手すりを付けるほどではない」「まだそこまで心配しなくても大丈夫」と思っていました。
しかし、今回のことがあって考え方が少し変わりました。
浴室の転倒予防は、事故が起きてからではなく、元気なうちに少しずつ考えておいた方が安心です。
浴室と脱衣所の床を確認する
まず確認したいのは、浴室や脱衣所の床です。
床が滑りやすい素材ではないか。
石けんやシャンプーが残っていないか。
足元や通り道に物が置かれていないか。
床や排水口をこまめに掃除するだけでも、滑りにくい環境づくりにつながります。
滑り止めマットは置き方にも注意する
浴室用の滑り止めマットを使う方法もあります。
ただし、マット自体がずれたり、端がめくれてつまずいたりすることもあるため、置けば必ず安全になるとは限りません。
床にしっかり固定できるか、使用後に乾燥させやすいか、本人が足を引っかけにくい形かを確認することが大切です。
つかまれる場所があるか確認する
浴槽をまたぐ場所や、湯船から立ち上がる時に手を添えられる位置に手すりがあると、体を支えやすくなることがあります。
すぐに工事をするのが難しい場合は、まず家族と一緒に浴室の中を確認してみるとよいと思います。
「普段、どこにつかまっているのか」
「どの動作が一番怖いのか」
「立ち上がる時に不安を感じるか」
本人に聞いてみると、家族だけでは気づかなかった危険が見つかるかもしれません。
吸盤式などの簡易的な手すりもありますが、壁の材質や設置方法によっては外れる可能性があります。
体重をしっかり支える目的で使う場合は、設置方法や耐荷重を確認し、必要に応じて専門家へ相談することが安心です。
照明を明るくする
浴室や脱衣所の照明を明るくし、足元を見やすくすることも大切です。
電球が暗くなっていないか、照明の影で段差が見えにくくなっていないかを確認します。
夜間に入浴することが多い場合は、浴室までの廊下や脱衣所も含めて見直すと安心です。
入浴前後に水分を取る
入浴中は、自分で思っている以上に汗をかくことがあります。
特に暑い季節は、本人が気づかないうちに水分が不足している場合もあります。
入浴の前後に無理のない範囲で水分を取ることも大切です。
ただし、水分量や持病との関係は人によって異なります。
心臓や腎臓などの病気で治療を受けている場合は、医師からの指示を優先してください。
家族がいる時間に入浴する
一人で入浴することが心配な場合は、家族が家にいる時間に入る方法もあります。
毎回そばで見守ることが難しくても、
「今からお風呂に入るね」
「お風呂から出たよ」
と声をかけ合うだけで、異変に気づきやすくなるかもしれません。
長時間浴室から出てこない場合に、誰がどのように確認するかを家族で決めておくことも大切です。
浴室の安全チェックリスト
実家や自宅の浴室を確認する時は、次の項目を一つずつ見ていくと分かりやすくなります。
☑ 浴室や脱衣所の床が滑りやすくないか
☑ 石けんやシャンプーが床に残っていないか
☑ 洗面器やボトルが通り道に置かれていないか
☑ 滑り止めマットがずれたり、めくれたりしていないか
☑ 浴槽をまたぐ時につかまれる場所があるか
☑ 湯船から立ち上がる時に体を支えられるか
☑ 浴室や脱衣所の照明が十分に明るいか
☑ 入浴前後に水分を取れるよう準備しているか
☑ 家族に入浴することを伝えているか
☑ 長時間出てこない時の確認方法を決めているか
すべてを一度に変える必要はありません。
気になった部分から一つずつ見直すだけでも、事故を防ぐきっかけになると思います。
父の転倒をきっかけに私が変えたこと
私も父の転倒があってから、実家へ行った時には浴室や脱衣所の様子を以前より気にするようになりました。
床は滑りやすくないか。
浴槽から立ち上がる時につかまる場所はあるか。
タオルや洗面器が通り道に置かれていないか。
以前なら見過ごしていたことも、今では自然と確認するようになりました。
「お父さん、滑り止めマットや手すりがあると、もっと安心じゃない?」
そう話しても、父はきっと「まだ大丈夫だよ」と言うと思います。
元気なうちは、自分が高齢者向けの対策を必要としているとは感じにくいのかもしれません。
それでも、事故を防ぐための準備は、本人に年齢を認めさせるためのものではありません。
これからも自分の家で、自分らしく安心して生活を続けるための工夫だと考えれば、少し話しやすくなるように思います。
高齢者の転倒事故は、骨折やけがだけで終わらず、その後の生活に影響することもあると言われています。
転ぶことが怖くなって外出を控えたり、体を動かす機会が減ったりする場合もあります。
すべての事故を完全に防ぐことは難しいかもしれません。
それでも、危険になりそうな場所を一つずつ確認し、本人と家族で話しておくことは、安心につながるのではないでしょうか。
よくある質問
高齢者のお風呂で特に注意したいことは何ですか?
浴室の濡れた床、浴槽をまたぐ動作、湯船から立ち上がる時のふらつき、脱衣所との温度差などに注意が必要です。
床の状態や手を添えられる場所を確認し、体調が悪い日は無理に入浴しないことも大切です。
滑り止めマットを敷けば転倒を防げますか?
滑り止めマットは対策の一つですが、置くだけで完全に安全になるわけではありません。
マットがずれたり、端につまずいたりすることもあるため、床との相性や固定状態を確認する必要があります。
手すりは工事をしないと付けられませんか?
浴室の壁に固定する工事式の手すりのほか、浴槽の縁に取り付けるタイプなどもあります。
ただし、簡易式の商品は設置場所や使い方によって外れる可能性があります。
本人の体重を支える目的で使う場合は、福祉用具の専門員や住宅改修の専門家へ相談すると安心です。
一人で入浴する時にできる対策はありますか?
入浴前に家族へ声をかける、決まった時間に入浴する、浴室に長くいる時の確認方法を決めるなどの対策が考えられます。
スマートフォンや緊急呼び出し機器を、浴室の外ですぐ使える場所に置いておく方法もあります。
転倒した時はすぐに起こした方がよいですか?
強い痛みがある場合や、頭を打った可能性がある場合、呼吸が苦しい場合、手足が動かしにくい場合は、無理に起こしたり動かしたりしない方がよいことがあります。
状態を確認し、必要に応じて医療機関や救急相談窓口へ相談してください。
まとめ
父が転倒した日は、妹と子どもたちが一緒にいてくれました。
本当に不幸中の幸いだったと思います。
もし一人だったらと考えると胸が苦しくなりますが、今回の出来事をきっかけに、父と母がこれからも安全に暮らすためにできることを、妹とも少しずつ相談していきたいと思っています。
浴室は毎日使う身近な場所だからこそ、危険に気づきにくいのかもしれません。
床の状態を確認する。
物を置かない。
照明を明るくする。
つかまれる場所を確認する。
入浴前後に声をかける。
どれも特別に難しいことではありません。
事故が起きてから後悔するのではなく、元気なうちに家族で浴室を見直しておくことが、安心して暮らし続けるための第一歩になると思います。
今回参考にした資料
・消費者庁「高齢者の事故防止に関する情報」
・東京消防庁「高齢者の救急事故・住宅内事故に関する情報」
・厚生労働省「高齢者の健康づくり・介護予防に関する情報」
※本記事は、公的機関が公開している情報を参考に、家族の体験を交えてまとめています。転倒後に強い痛みがある場合、呼吸が苦しい場合、頭を打った可能性がある場合、動けない場合などは、無理に動かさず、医療機関や救急相談窓口へ相談してください。
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